成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)
ここでは免疫不全を引き起こすといわれる成人T細胞白血病についてまとめました。原因や発症過程、免疫力を上げる米ぬか多糖体も紹介しています。
成人T細胞白血病(ATL)とは?
成人T細胞白血病/リンパ腫とは、HTLV-1ウイルスが白血球の1つであるT細胞に感染し、がん化することで発症する病気です。免疫機能で重要な役割を持つT細胞が働かなくなるため、発症して早い段階で免疫不全が起こるのが特徴。ウイルスに感染したT細胞は他の白血病と異なり、核部分が花びらのような形をしています。
HTLV-1ウイルスに感染しても必ず成人T細胞白血病/リンパ腫になるわけではありません。しかし、発症してしまうと他の白血病やリンパ腫に比べて症状が幅広いため、完全に治療するのは難しい場合もあります。
成人T細胞白血病/リンパ腫の発症過程
骨髄で造血幹細胞から分化したリンパ系幹細胞は、B細胞(Bリンパ球)、T細胞(Tリンパ球)、NK細胞3種類の細胞に分かれます。このうち、免疫機能をつかさどるT細胞が外から入ってきたHTLV-1ウイルスに感染。ウイルスに感染したT細胞であるATL細胞は増殖し、成人T細胞白血病/リンパ腫となります。
成人T細胞白血病(ATL)の病型と症状
成人T細胞白血病は症状が多岐にわたることから区別が難しく、大きく「急性型」「リンパ腫型」「慢性型」「くすぶり型」の4つに分けられます。
病型 | 急性型 |
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症状 | 血液中でATL細胞の増殖が見られる病型。皮膚の発疹やリンパ節の腫れ、高カルシウム血症を引き起こします。臓器が腫れて全身症状が現れるため、早期の治療が必要です。 成人T細胞白血病(ATL)では、どの病型であっても血液中のカルシウムが上昇することが初期症状として挙げられます。 急性型の場合はこの症状が急速に起こるほか、血液中のATL細胞が急激に増えるという症状もあります。 高カルシウム血症が急激に起こることで、肝臓や肥大が腫れた状態となってしまうと共に、免疫を司る白血球「T細胞」ががんとなってしまっているため、感染症を引き起こしやすくなります。この感染症は日和見感染症と呼ばれます。 成人T細胞白血病の早急な治療が必要となり、また治療にはかなり長い時間がかかります。 特に急性型の場合は、予後が悪いと1年以内に死亡する可能性が高い、危険な病型です。 参考:成人T細胞白血病/リンパ腫[PDF] |
病型 | リンパ腫型 |
症状 | ATL細胞は血液中で増殖していないものの、大きなリンパ節の腫れや皮ふ病変が出ます。急性型と同様に重症化していることがほとんどです。 リンパ腫型は急性型のようにATL細胞が血中に増加しているということはないのですが、症状が重症化しているという点では急性型と同じです。 このため、早期の治療が重要となります。 またリンパ腫型でなくても、リンパ節でATL細胞が増殖することがあるので、リンパ節の腫れが見られたり、肝臓や肺、消化器官などに異常をきたすことも少なくありません。 またいずれの病型でも皮膚に病変が見られるのも特徴です。 そのほか、骨髄に症状が及ぶと、正常な赤血球や血小板が作られる機能が低下してしまい、全身の倦怠感や貧血症状などが起こるほか、鼻血や歯茎からの出血症状が起こることもあります。 さらに腫瘍細胞が中枢神経にも及んでしまうと、頭痛や吐き気などの症状を引き起こします。 参考:多彩な骨病変をきたしたリンパ腫型成人T細胞白血病の1症例[PDF] |
病型 | 慢性型 |
症状 | 慢性的に病状が経過していて、皮膚が赤くはがれやすくなる剝脱性皮疹(はくだつせいひしん)が見られます。 慢性型は、名前の通り慢性的に病状が進行していく病型で、皮膚が赤くなり、剥がれやすくなる症状が見られることが多いです。 皮膚に異常が出るほかには、自覚症状はほとんどなく、急性型やリンパ腫型のような危険性は低いとされています。 体の中では、血液中の白血球が増え有り、多数の異常リンパ球が現れるなどの症状が起こりますが、増殖のスピードも遅く、これらが直接体に悪影響を及ぼすことはなく、治療せずに経過観察することがほとんどです。 参考:10年におよぶ経過を観察しえた慢性型成人T細胞白血病の1例[PDF] |
病型 | くすぶり型 |
症状 | 皮膚や肺に病変が見られますが、ほとんど症状がないのが特徴です。 白血病は白血球数に異常が起こるケースが多いですが、くすぶり型では血液中に異常リンパ球が出現します。 大きな自覚症状はりませんが、皮膚に病変を伴ったり、肺に異常が見られることがあります。 こちらも慢性型同様早急に治療が必要な病型ではないため、基本的には無治療で、経過観察をしながら様子を見るというケースが一般的です。 参考: HTLV −1 ass・ciated myel・pathy(HAM)にくすぶり型成人T 細胞白血病(ATL)を合併した 1例[PDF] |
成人T細胞白血病はそれぞれの病型で起こる症状が違い、皮ふや臓器など様々な部位に影響します。自覚症状がない病型もあれば早期治療が必要な病型もあるため、治療を行う前により正確な診断をする必要があります。
成人T細胞白血病(ATL)治療の流れ
診察
自覚症状や困っていることなどを医師に相談し、検査の内容を決めます。
慢性型やくすぶり型の場合は、自覚症状がほとんどないので初期で発見されることは少ないですが、リンパ腫型や急性型に移行する確率が25%だといわれているため、移行したことで発覚するケースは多いと思われます。
そのほか、健診で発見されることもあれば、皮膚の異常で診察を受けたときに発見されることもあるようです。
リンパ腫型や急性型の場合は、自覚症状を感じて診察を受けるケースが多いですが、さほど症状がひどくなかったとしても、体調に異変を感じたときは速やかに医師の診察を受けてください。
検査
血液検査や骨髄検査などを行い、白血病細胞の数や臓器の機能チェック、成人T細胞白血病特有の「花細胞」が見られるかどうかを検査。様々な症状がある場合、検査の種類が増える可能性があります。
成人T細胞白血病であるという診断を行うためにもさまざまな検査が必要になりますが、治療法を選択するためにもこうした検査はとても重要です。
成人T細胞白血病において用いられる代表的な検査は、「血液検査」と「骨髄検査」ですが、ほかにも必要に応じていろいろな検査を行います。
「血液検査」では、血液中の血清を使用し、PA法と呼ばれる方法でHTLV-1ウイルスに感染しているかどうかを調べます。
そのほか、血液中で増えたり、減少している細胞を調べて、増加している異常細胞が白血球のT細胞であった場合には、成人T細胞白血病と診断されます。
「骨髄検査」では、骨髄液に含まれている細胞を調べるために、骨髄液を採取します。
骨髄液の採取は局所麻酔を使用して行うのですが、骨髄液を注射器で吸い取るときにどうしても痛みが生じ、これは麻酔の効果で抑えることができません。
ただし、痛みは一時的なので、しばらくすると治まります。
「病理検査」は、リンパ腫型であるかどうかを診断するためにもっとも重要な検査です。
リンパ節生検や腫瘍、皮膚生検などを行い、白血球の中の腫瘍細胞を調べ、T細胞の影響で異常をきたしている細胞が存在することが確認された場合、成人T細胞白血病と診断されます。
ほかにも、病理検査で採取した組織を使用して行う「染色体検査」や「遺伝子検査」、CCR4抗原がある場合に行われる「CCR4抗原検査」、「超音波検査」や「CT検査」も必要時応じて行います。
治療
病型分類をした後、病状の重さ判定が行われ進行具合や全身の状態を診断したうえで治療を決めます。主な治療法は化学療法や分子標的治療、支持療法などです。
急性型やリンパ型の場合、年齢が70歳未満で協力な化学療法に耐えられると判断された場合は、抗がん剤などを使用した強力な化学療法を中心に治療を行います。
化学療法で顕著な回復が見られなかった場合には、造血幹細胞移植を行うこともあります。
造血幹細胞移植は、65歳から70歳の人は「骨髄非破壊的移植」という治療法を用います。
年齢が70歳以上、もしくは強力な化学療法に耐えられないと判断された場合には、単剤化学療法を用いた治療を行います。
慢性型やくすぶり型は、先にご紹介したように自覚症状がないことが多いため、主に経過観察となりますが、慢性型で予後不良因子があると判断された場合には、内服による化学療法や、場合によっては効力な化学療法を行うこともあります。
また、いずれの場合も皮膚症状が出ている歳には皮膚科的治療で皮膚の病変を改善します。
参考:成人T細胞白血病リンパ腫に対する抗体療法(抗CCR4抗体)[PDF]
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/htlv/dai4/siryou2.pdf
成人T細胞白血病(ATL)の原因
成人T細胞白血病の原因は、リンパ球であるT細胞にHTLV-1ウイルスが感染してがん化することです。幼少時に母乳を与えられたり出産時に体液に触れたりすることでHTLV-1ウイルスに感染するため、幼少時に感染していない方はほぼ発症しないといわれています。
ただし、ウイルスを保有している方が全て成人T細胞白血病になるわけではなく、一生がん化しない人も。しかしATLになるまでの仕組みは分かっておらず、予防方法は今のところ感染を防ぐことだけといわれています。
成人T細胞白血病の発症は、乳児期に母乳を通じてHTLV-1ウィルスがT細胞に感染することが原因と考えられています。
そのため、成人T細胞白血病を克服するには、遺伝子の異常やその分子の仕組みを解明し、発症の予測や直接的に有効な治療薬の開発が必要です。
現在はまだ有効な治療薬はないため、根治的治療としては造血幹細胞移植のみが有効だと考えられていますが、これまでもさまざまな研究によって解明されてきた事実も多く、また現在も研究が続けられているため、より早急な治療薬の誕生を期待したいところです。
参考:成人T細胞白血病リンパ腫における遺伝子異常の解明[PDF]
https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2015/1006/press_release_20151006.pdf
成人T細胞白血病(ATL)の症状
成人T細胞白血病で起こる症状は病型によって異なっており、中にはすぐに治療しないと命にかかわる症状も。検査の際は症状の種類で4つの病型を決定します。
- 急性型
皮膚の発疹やリンパ節の腫れといった代表的な症状のほかに、高カルシウム血症や臓器の腫れなど重い症状を引き起こします。 - リンパ腫型
1cm以上の大きなリンパ節腫脹や皮ふ病変が特徴です。 - 慢性型
皮ふが赤くはがれやすくなる剝脱性皮疹(はくだつせいひしん)が出ます。 - くすぶり型
重篤な症状はなく、皮膚や肺の病変だけが起こります。
成人T細胞白血病(ATL)の治療法
成人T細胞白血病の治療法は急性白血病とほとんど同じで、化学療法(抗がん剤治療)や分子標的治療などをメインに行います。
- 化学療法(抗がん剤治療)
急性型やリンパ腫型といった進行が早い病型では複数の細胞障害性抗がん剤を使った多剤併用療法が行われます。
大量の抗がん剤を投与するため、治療当日から治療後の数ヵ月は様々な副作用に悩まされることも。しかし、予測される副作用に合わせてできるだけ対策を立てたうえで治療を行ってくれます。 - 分子標的治療
成人T細胞白血病で見られるがん増殖分子「CCR4抗原」を標的として薬剤で排除します。初めての治療では化学療法と併用して2週間おきに点滴を8回実施。ただし、副作用があるため、症状が悪化しないように注意しながら治療が行われます。 - 造血幹細胞移植
造血幹細胞移植は、大量の化学療法や放射線治療を行った後に骨髄機能を回復させる治療です。事前に採取した造血幹細胞を投与し、機能が落ちた骨髄を元に戻します。 - 支持療法
支持療法は症状や治療に伴う副作用を軽くするための治療で、感染症が起こりやすい場所のケアを行います。治療内容は抗生物質や抗ウイルス薬の投与、高濃度赤血球の輸血など。症状の緩和だけでなくメンタルケアも含めた多種多様な治療が行われます。
成人T細胞白血病(ATL)の合併症
成人T細胞白血病になると免疫をつかさどるT細胞が働かなくなり、大幅な免疫力低下が起こります。抗がん剤や分子標的薬による治療でさらに免疫が抑制されるため、通常は影響がない弱いウイルスでも合併症を引き起こすことも。免疫機能が弱っている状態で合併症を起こすと最悪死亡する可能性があるので、手洗いうがいや部屋の掃除などをしっかり行ってください。
成人T細胞白血病(ATL)の再発
治療でがん細胞の割合が基準を下回った際、治療効果があったと判断される場合があります。ただし、治ったと判断された場合でも再度症状が出ることも。その場合、患者一人ひとりに合った治療が再検討されます。初めは救援療法として化学療法や分子標的治療を行い、効果があれば造血幹細胞移植を行います。
成人T細胞白血病(ATL)だと診断されたときにできること
成人T細胞白血病は免疫細胞の中でも重要なT細胞がウイルスに感染することで発症する病気です。そのため、発症した時点で免疫力が大幅に低下。そのうえ白血病治療で免疫を抑制するため、感染症になりやすくなります。T細胞は免疫として働かないため、成人T細胞白血病だと診断された場合はリンパ以外の免疫細胞を強化することが大切です。
また、免疫細胞を強化する効果があるといわれている成分を試すのもいいでしょう。近年注目されている「米ぬか多糖体」はNK細胞を活性化し、免疫機能を調整してくれる効果が分かっています。(※1)
成人T細胞白血病で悩んでいる方は、免疫機能を回復させるためにも試してみてはいかがでしょうか。
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【参照元】※1:米ぬか多糖体免疫研究会「NK細胞の活性抗がん作用」(https://rbsnuka.com/)