白血病の治療方法と免疫力を高める注目成分まるわかり

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原因

骨髄のなかにある造血細胞ががんになることで発病する白血病。その原因はなんなのでしょうか?発がん性物質やウイルス、放射能などとの関係性について調べてみました。

白血病の原因とされるもの

白血病は遺伝子や染色体が傷つけられることにより発症すると考えられていますが、その発症メカニズムは完全には解明されていません。遺伝子が傷つく原因にはベンゼンやトルエンなどの発がん性物質の他に放射能、ウイルスなどが挙げられています。

発がん性物質

たばこに含まれる発がん物質が臓器の遺伝子を傷つけて食道がんや胃がん、口腔がんを誘発することは知られています。骨髄性白血病の患者にも喫煙者が多い という調査がありますが、その関連性については明らかになっていません。たばこに含まれるタールやベンツピレン の他にもベンゼンやトルエンなど、白血病との関連性が研究されている発がん物質は多くあり、発病メカニズムの解明が待たれるところです。

放射能

放射能による被ばくも白血病の原因になると言われています。広島・長崎の原爆やチェルノブイリの原発事故の後には近隣住民に白血病が多発。東日本大震災での福島第一原子力発電所の事故後も白血病リスクが心配されました。しかし、放射能と白血病発症との関係性についてはまだ分かっていないことも多いのが現状です。

ウイルス

「HTLV-I」というウイルスにより成人T細胞白血病を発症すると言われています。ただし、HTLV-1ウイルスに感染したからといって、必ず成人T細胞白血病にかかるわけではありません。HTLV-I以外にも白血病との関係が疑われているウイルスは数多くありますが、いずれも詳しいことが分かっておらず、今後のさらなる研究が期待されています。

HTLV-1とは?

HTLV-1とは、ヒトT細胞白血病ウイルス(Human T-cell Leukemia Virus Type 1)の略称で、血液中の白血球のひとつであるリンパ球に感染するウイルスです。HTLV-1が発見されたのは1980年と比較的最近ですが、このウイルス自体は古くから人類と共存してきたものです。日本では縄文時代より前からHTLV-1の感染があったといわれています。

引用:厚生労働科学研究費補助金 がん対策推進総合事業「HTLV-1情報サービス」(http://www.htlv1joho.org/general/general_htlv1.html)

白血病は遺伝する?

親から子へ白血病が遺伝することは基本的にありません。ただし、ウイルスが引き金となって発症する白血病に関しては、ウイルスが母乳を介して感染し、結果的に白血病が遺伝しているように見えることがあるようです。

また、遺伝子が変異しやすい体質が遺伝することで、白血病にかかりやすくなる可能性も。

白血病そのものが遺伝することはありませんが、白血病にかかりやすい体質は遺伝すると言えます。

種類別に見る白血病の原因

白血病は、大別して「急性白血病」と「慢性白血病」の2種類があり、さらに、それぞれ「骨髄性白血病」と「リンパ性白血病」とに分かれます。これら白血病の原因について、愛知県がんセンター中央病院の公式情報を引用しながら解説します。

急性白血病の原因

愛知県がんセンターでは、急性骨髄性白血病と急性リンパ性白血病の原因について、次のように解説しています。

血液細胞の中にしまい込まれた設計図(遺伝子)に何らかの理由で傷がついてしまい、分化・成熟の調節が失われると起こると考えられています。遺伝子の傷がどのようにして白血病の発生に関わるのか、詳細な研究が進められています。

引用:愛知県がんセンター中央病院「白血病」(https://www.pref.aichi.jp/cancer-center/hosp/12knowledge/iroirona_gan/20hakketsu.html)

「何らかの理由」で遺伝子に傷がついてしまうことが原因ですが、遺伝子に傷がついてしまう具体的な原因までは明確にされていません。先天性、後天性、さまざまな可能性が検討されている段階です。

慢性骨髄性白血病の原因

この白血病では、細胞中の遺伝子が存在する場である染色体に、特別な異常があります。9番と22番染色体にある、ABL遺伝子とBCR遺伝子が途中で切断されて両者で1つの遺伝子(BCR-ABLキメラ遺伝子、図3)を形成してしまうものです。そこで、個々の血液細胞にBCR-ABL遺伝子が存在すれば、慢性骨髄性白血病と診断することになります(この異常染色体のことをフィラデルフィア染色体と言います)。ただ、この異常は白血病細胞だけに見られるもので、白血病細胞が増加する原因です。この異常は他の正常の細胞には認められませんし、遺伝することは決してありません。

引用:愛知県がんセンター中央病院「白血病」(https://www.pref.aichi.jp/cancer-center/hosp/12knowledge/iroirona_gan/20hakketsu.html)

慢性骨髄性白血病の具体的な発症原因は、9番と22番の染色体にある遺伝子の異常にあります。ただし、これらの遺伝子になぜ異常が生じるのかという点については、同病院のコメントでは明記されていません。

「遺伝することは決してありません」との断言が見られるため、後天的な原因によって発症する病気と考えて良いでしょう。

慢性リンパ性白血病の原因

通常Bリンパ球は、細胞表面に、免疫グロブリンを持っていますが、各々のリンパ球は1種類のみの免疫グロブリンを持っており、慢性リンパ性白血病の場合は一種類(単クローン)の免疫グロブリンを持った細胞が多数存在することから、腫瘍であることがわかります。

引用:愛知県がんセンター中央病院「白血病」(https://www.pref.aichi.jp/cancer-center/hosp/12knowledge/iroirona_gan/20hakketsu.html)

慢性リンパ性白血病が発症する原因は、「一種類(単クローン)の免疫グロブリンを持った細胞が多数存在すること」と説明されています。しかし、なぜこのような細胞異常が発生するかについては言及されていません。

なお、慢性リンパ性白血病は、日本人の白血病患者全体のうち、約5%程度と頻度は低め。欧米人に比較的多く見られる病気です。

様々な病院の見解

白血病の治療実績が豊富な他の病院の公式HPから、白血病の原因に関連する重要なコメントを引用してご紹介します。

新潟県立がんセンター新潟病院における見解

新潟県立がんセンター新潟病院では、成人に発症する急性骨髄性白血病の原因について、次のように説明しています。

白血病の原因は未だはっきりしていません。ある種の先天性の免疫不全症や、染色体(遺伝子)異常を伴う先天性疾患でも白血病が発生しやすいといわれています。また放射線・抗がん剤なども白血病を引き起こす可能性があるといわれており、これらの治療を受けた後に発症した白血病を二次性白血病と呼びます。しかし大半の場合は明らかな原因が不明なので、効果的な予防法も明らかではありません。

引用:新潟県立がんセンター新潟病院「血液のがん: 成人急性骨髄性白血病」(http://www.niigata-cc.jp/disease/ketueki_aml.html)

白血病の原因ははっきりしておらず、かつ、効果的な予防法も明らかになっていません。しかし、予防法は明らかでないものの、早期に発見された場合には完治する可能性が高いとも言われています。

岩国医療センターの谷本光音院長の見解

岩国医療センターの谷本光音院長は、自身が運営するwebサイトにて、白血病の原因を次のように解説しています。

慢性の骨髄性の白血病の場合ひとつの遺伝子異常で発症する病気だということがわかりました。一方、慢性のリンパ性の白血病は日本人には非常に少ないのですが、むしろ細胞が増殖するというよりはリンパ球が死ななくなって発症する病気です。

通常リンパ球は、何十日から何百日のサイクルでアポトーシス=細胞が死に至ります。慢性のリンパ性の白血病はそのメカニズムが壊れてしまい、リンパ球が身体の中にたまって肝臓や脾臓、リンパ節が腫れて起こる病態だということがわかってきました。またその特別な染色体というものも何種類か発見されています。

引用:谷本光音先生のウェブサイト「白血病の特徴」(http://www.e-oishasan.net/site/tanimoto/desease01.html)

なお、谷本院長は同じサイトの中で、「白血病は遺伝しない」と断言しています。白血病の遺伝性に関する議論には様々な見解がありますが、谷本院長は、健康な人にもある日突然発症する病気、と説明しています。

磐田市立総合病院における見解

磐田市立総合病院の公式HPでは、遺伝子に異常が生じる原因として、具体的な例を挙げています。

発症する原因は明らかにはされていませんが、最近の研究では様々な原因により遺伝子が傷つき、傷ついた遺伝子から初期の癌細胞が発生することがわかっています。遺伝子を傷つける原因は、放射能や紫外線、タバコをはじめ、日常の中にたくさんあり、初期の癌細胞は私たちの体内では常に作られています。多くの場合、この初期の癌細胞はまもなく消えてしまい、正常な状態に戻ります。しかし、ごく一部の人ではそのまま増殖し続けて、本当の癌になってしまいます。初期の癌細胞が増殖し続けるか消えてしまうかは、全くの偶然によるもののようです。

引用:磐田市立総合病院「慢性骨髄性白血病について」(https://www.hospital.iwata.shizuoka.jp/medicine/023/index.html)

放射線、紫外線、タバコなど、日常のいたるところに白血病の原因が潜んでいると指摘されています。なお同病院では、岩国医療センターの谷本光音院長と同様、「白血病が遺伝することは、通常はない」と説明しています。

記事の参考にさせていただいた医療機関

当記事は、愛知県がんセンター中央病院(愛知)、新潟県立がんセンター新潟病院(新潟)、岩国医療センター(山口)、磐田市立総合病院(静岡)が公開している情報を参考に作成しています。

愛知県がんセンター中央病院

愛知県がんセンター中央病院
https://www.pref.aichi.jp/cancer-center/hosp/index.html
院長 丹羽 康正
所在地 愛知県名古屋市千種区鹿子殿1-1
TEL 052-762-6111
受付時間 平日 9:00~19:00
土曜 9:00~13:00
休診日 日曜、祝日、年末年始

「標準治療こそ最も信頼性の高い治療法」を啓蒙

愛知県がんセンター中央病院は、昭和39年に開院した総合病院。院名のとおり、がん治療に力を入れている医療機関ですが、ほかにも総合病院として脳神経外科や整形外科、循環器科など計38の診療科を設置しています。白血病の診療にあたるのは血液・細胞療法部。山本一仁部長を筆頭に、5名の血液専門医が診療にあたります。2017年における点滴化学療法の症例数は964件、輸血療法症例数は165件。

「標準治療こそ最も信頼性の高い治療法」であることを、がん治療の拠点病院として県民に広く啓蒙中。

血液・細胞療法部部長 山本一仁医師

1993年、愛知県がんセンター化学療法部門の研究員として入職。のち名古屋大学大学院医学系研究科助手等を経て現職に就任しています。血液腫瘍の中でも、特に悪性リンパ腫と慢性骨髄性白血病を専門に診療しているドクターです。患者と相談しながら最良の治療法を選択することがモットー。日本血液学会や日本臨床腫瘍学会、日本内科学会など、複数の学会の専門医・指導医資格を所持しています。

新潟県立がんセンター新潟病院

新潟県立がんセンター新潟病院
http://www.niigata-cc.jp/index.html
院長 佐藤 信昭
所在地 新潟県新潟市中央区川岸町 2-15-3
TEL 025-266-5111
受付時間 8:30~11:00
休診日 要問合せ(診療科により異なる)

全国に先駆けて設立されたがん治療の公立拠点

新潟県立がんセンター新潟病院は、もともと性病治療を目的として昭和25年に開院された「県立新潟病院」が前身。昭和33年、全国に先駆けてがんの治療拠点の県指定を受け、昭和36年、新潟県立がんセンター新潟病院として生まれ変わりました。

22の診療科のうち、白血病の治療を専門に行っているのは内科にある血液・化学療法部門。年間の血液悪性疾患症例数は160~180例で、急性白血病の完全寛解導入率は80~90%です。

内科( 血液・化学療法)臨床部長 張高明医師

1980年、日本医科大学医学部卒業。新潟大学医学部附属病院助手などを経て現職に就任。専門は血液・化学療法、造血幹細胞移植、腫瘍内科。多くの学会の専門医・指導医資格を持つとともに、日本血液学会代議員、日本内科学会評議員、日本骨髄腫学会理事なども務める血液学の権威です。がんに関する幅広い診療経験があり、乳癌の認定医資格も所持しています。

岩国医療センター

岩国医療センター
https://www.iwakuni-nh.go.jp/
院長 谷本 光音
所在地 山口県岩国市愛宕町1-1-1
TEL 0827-34-1000
診療時間 8:30~17:15
休診日 土曜、日曜、祝日、年末年始

岩国市周辺までを医療圏とした地域の中核病院

岩国医療センターは、山口県岩国市を中心に広島や島根の一部も医療圏とする地域の中核病院。内科や外科、整形外科などの一般診療科に加え、血液内科や乳腺外科、糖尿病・内分泌内科などの専門診療科など、計32の診療科を設置する総合病院です。

白血病は、主に血液内科にて診療。白血病や悪性リンパ腫などをメインに、鉄分不足等を原因とした貧血症の治療にも対応している診療科です。

院長 谷本光音医師

1977年、名古屋大学医学部卒業。米国スローン・ケタリング癌研究所、名古屋大学第一内科等を経て、現在、岩国医療センター院長と岡山大学第二内科教授を兼任しています。血液学に関する複数の専門医資格を持つとともに、日本血液学会理事、日本造血細胞移植学会副理事長、日本癌治療学会理事、日本癌学会理事・評議員、日本内科学会評議員など、多くの学会の要職を併任しています。

磐田市立総合病院

磐田市立総合病院
https://www.hospital.iwata.shizuoka.jp/
院長 鈴木 昌八
所在地 静岡県磐田市大久保 512-3
TEL 0538-38-5000
受付時間 要確認(科によって異なります)
休診日 土曜、日曜、祝日、年末年始

1日に1,200人もの患者が来院する地域の拠点病院

磐田市立総合病院は、陸軍病院を継承して昭和27年に開設された総合病院。1日に約1,200名もの患者が来院する地域の拠点病院です。「内科系」「外科系」「その他」に分けられた診療科は全部で34。血液内科やリウマチ科、乳腺外科などの専門診療科も設置しています。

白血病の診療にあたるのは、主に血液内科。白血病のほかにも、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫、再生不良性貧血を専門的に診療し、化学療法、放射線療法、免疫抑制剤等で治療を行っています。

血液内科部長 藤澤紳哉医師

1993年、浜松医科大学医学部卒業。造血器腫瘍を専門領域とし、関連する疾患に幅広く対応しているドクターです。日本内科学会、日本血液学会、日本輸血・細胞治療学会、日本臨床腫瘍学会、日本造血細胞移植学会など、多くの学会の専門医資格を所持。指導医として若手ドクターの育成にも力を入れています。

参考サイト

愛知県がんセンター中央病院「白血病」(https://www.pref.aichi.jp/cancer-center/hosp/12knowledge/iroirona_gan/20hakketsu.html)

新潟県立がんセンター新潟病院「血液のがん: 成人急性骨髄性白血病」(http://www.niigata-cc.jp/disease/ketueki_aml.html)

谷本光音先生のウェブサイト「白血病の特徴」(http://www.e-oishasan.net/site/tanimoto/desease01.html)

磐田市立総合病院「慢性骨髄性白血病について」(https://www.hospital.iwata.shizuoka.jp/medicine/023/index.html)

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